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小さなミニチュア人形を造形中の卓上3Dプリンタと、樹脂の試作品が並ぶ作業台

CAPSULE TOY INDUSTRY REPORT

3D原型・製造・筐体
開発から運営までの技術

原型制作のデジタル化、量産の流れ、キャッシュレス筐体と販売データの活用を公表資料で整理します。

企画から量産まで:カプセルトイができるまで

最終更新日:

カプセルトイの商品は、ほんの数センチの小さな造形物ですが、企画から店頭に並ぶまでには、玩具メーカーに共通する工程があります。企画の立案、キャラクターや題材の権利処理、デザイン、原型の制作、金型の製作、量産、検品、梱包、出荷という流れです。小さな商品だからこそ、シリーズ全体の統一感や、複数のデザインを同時に作る段取りが重要になります。

この流れの一端を具体的に伝えているのが、産業専門メディアのMONOistが2019年10月に掲載した、エポック社のカプセルトイ開発の紹介記事です。記事によれば、同社では商品開発の担当者が一人で複数の案件を同時に進めており、昨年は12〜15件を手がけ、企画段階のものを含めると一人あたり20〜30件を抱えていました。原型のもとになる3D図面は、商品サイクルが速いことから基本的に社外に依頼し、金型用の3D図面も、社内で仕様書(イラストや製作仕様)を作成したうえで協力会社と進める形が基本とされています。金型の製作、塗装、組み立ては協力会社の工場で行われ、記事に掲載された作業写真は中国の工場でのものと説明されています。

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この記事は2019年時点の一社の事例であり、現在の同社の体制や業界全体の状況を示すものではありません。メーカーによって、原型を社内で作るか外部に委託するか、量産をどの地域の工場で行うかは異なります。ただし、開発の担当者が多数の案件を並行して管理する働き方や、原型制作と量産を役割分担する構造は、カプセルトイが「多品種・短サイクル」の商品であるという特徴を反映しています。日本カプセルトイ協会の資料でも、新商品のリリースは2022年度の月400種類超から、2024年度には月約700種類に増えたと報じられており、開発の負荷は高まる方向にあります。

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原型制作のデジタル化:3D CAD、3Dプリンタ、スキャン

原型制作の現場では、デジタル技術の活用が進んでいます。MONOistのエポック社に関する記事(2019年10月8日掲載の2ページ目)は、同社のデジタル活用として、次の内容を紹介しています。

  • 3Dプリンタ:計4台が稼働しており、内訳はストラタシスの「J750」2台、「Objet24」1台、「ML-48」1台です。
  • CAD・設計ソフト:SOLIDWORKS、Geomagic Freeform、Rhinoceros 3D、Fusion 360などが挙げられています。
  • スキャナとデータ修正:CTスキャナのほか、CADdoctor、Geomagic Wrap、Materialise Magicsなどが使われています。

同記事によれば、「J750」は複数の素材に対応する特長により、一度の出力で複数のデザインを作り、その場で比較検討できるようになり、試作にかかる時間とコストが大きく減ったと説明されています。社内の3Dプリンタで作った試作品は、形状の確認と同時に、品質保証の確認にも使われ、ギミックを含む製品では機能の確認にも活用されるとのことです。

3Dプリンタの利点は、金型をつくる前に形や動きを確かめられることです。金型の製作には時間も費用もかかるため、試作の段階で問題を洗い出せれば、量産に入ってからの手戻りを減らせます。また、小さな部品の組み合わせや可動部の動きを、実物で確かめられる点も、ミニチュアや可動式のマスコットを作る場合には大きな利点です。

3Dプリントそのものを量産に使う方法もあります。金型を作らずに、必要な数だけを出力する方式は、少量の商品や試験的な企画、企業のノベルティなどに向く一方、量産品に比べて、1個あたりのコストや仕上がりの均一性、納期の面で条件が異なります。どの方式が適するかは、数量、予算、品質の水準によって変わるため、複数の事業者に見積もりと条件を確認するのが基本です。

生成AIと原型制作:期待と確認事項

画像や3Dモデルを自動で生成するAIの技術は、玩具やフィギュアの企画にも関心を集めています。一般論として、AIで生成した画像をもとに企画の方向性を検討したり、文章の指示から3Dモデルの試作データを作ったりすることで、イメージ出しから試作までの時間を短縮できる可能性があります。

ただし、国内のカプセルトイメーカーによる生成AIの具体的な導入事例は、本ページでは取り上げていません。AIの導入を検討する事業者や、AIを活用したと謳う商品を購入する消費者の双方が、押さえておきたい視点を整理します。

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  • 権利関係:AIが生成した画像やモデルが、既存のキャラクターや作品、他者の作品に類似していないか。既存の権利者から預かった題材をAIに入力する場合、契約上の制限がないか。
  • データの出所:生成に使われる学習データや、利用するサービスの利用規約が、商用利用を認めているか。
  • 最終品質の責任:AIの出力はあくまで素材であり、形状の強度、小さな部品の安全性、塗装や表示の品質は、メーカーが責任を持って確認する必要があります。
  • 表示の正確性:AIを使ったことを商品の魅力として表示する場合、実際の工程と矛盾しない表現にする。

AIを使う、使わないにかかわらず、商品の品質と権利の確認は人が責任を持つ、という原則は変わりません。

キャッシュレス筐体と販売データの活用

筐体の側でも、技術の導入が進んでいます。Impress Watchは2019年4月18日付の記事で、バンダイが同月から本格稼働を始めたキャッシュレス決済対応のカプセルトイ自販機「スマートガシャポン」を紹介しています。1セットは、10インチのタッチパネルと交通系電子マネーの読み取り機が1面、商品の販売機が5面で構成され、利用者はタッチパネルで商品を選び、Suicaなどのカードをかざしてから、販売機のハンドルを回してカプセルを受け取ります。決済は交通系電子マネーが先に対応し、二次元コードによる支払いも今後対応する予定と記されていました。

この筐体の特徴は、LTE通信のモジュールを備え、運営者が遠隔地からでも販売データを確認できることです。従来は現地で目で見るしかなかった在庫や売上の状況を、データとして把握できるようになります。利用者向けには、公式の「ガシャどこ?PLUS」というウェブサイトで、筐体の設置場所と商品情報を調べられます。購入後にはタッチパネルにくじ形式のゲームが表示される演出もあったと記事は伝えています。

地域の取り組みでは、前述のとおり三重県の「街ガチャin菰野町」が、主要なスマートフォン決済に対応した「ピピットガチャ」という機種で、町内9か所で販売されています。2026年3月に販売を始め、初回に生産した2,000個は1か月たたないうちに完売したと同ページに記載されています。再販は4月16日から町内各所で順次行われました。決済手段が増えることで、小銭を持たない利用者や外国人旅行者にも対応しやすくなる点が、導入の動機として考えられます。キャッシュレス化の背景は、関連サイトのキャッシュレス決済の現況もご覧ください。

在庫・売上データの見方と需要予測の考え方

通信機能を持つ筐体や管理システムから得られるデータは、売場運営の判断材料になります。公式資料に基づいて裏づけられる範囲では、遠隔での販売データの取得までが確認できる内容です。そのうえで、データをどのように使うかの考え方を整理します。

  • 面ごとの販売状況:筐体の1面ごとに、販売数と補充のタイミングを把握する。売れる速さが違う商品を同じ頻度で補充すると、欠品や過剰在庫の原因になります。
  • 時間帯・曜日・季節の傾向:来店客の多い時間帯や、休日と平日の差、イベントや連休の影響を見て、補充や入れ替えの計画に反映する。
  • 新商品とロングセラーの比率:新商品が増える環境では、定番商品と新商品のバランスが売場の印象を左右します。
  • シリーズ内の偏り:特定のデザインだけが売れ残る場合の対応方針(入れ替え、値引きではなく配置の変更など)。

需要予測にAIや統計の手法を使う事例は他の小売業では一般的ですが、カプセルトイ業界での具体的な導入事例は、本ページでは取り上げていません。データを使う場合も、個人情報を含まない販売データに限る、利用者が識別されない形で扱うなど、プライバシーへの配慮が欠かせません。

環境への配慮:カプセルの素材

カプセルトイは、1個ごとにプラスチックの容器を使うため、容器の廃棄が環境面の課題として語られることがあります。三重県観光連盟のページによれば、「街ガチャin菰野町」のカプセルには生分解性の樹脂が使われ、プラスチック廃棄物の削減に貢献するとされています。こうした素材の選択は、自治体や企業が環境への姿勢を示す手段にもなります。ただし、生分解性の性能や処理の条件は素材により異なるため、具体的な性能は各製品の説明で確認する必要があります。

検品・品質管理と安全の視点

小さな造形物を大量に作るカプセルトイでは、量産の段階での品質管理が欠かせません。成形品の寸法の誤差、塗装のかすれやはみ出し、部品のはめ込みの緩み、接着の不良などは、数が多いほど見逃しやすくなります。検品の方法は、全数を目視で確認する方法、一定数を抜き取って検査する方法、治具を使って寸法を測る方法など、メーカーや工場の体制によって異なります。

前述のエポック社の記事は、社内の3Dプリンタで作った試作品を、形状の確認と同時に品質保証の確認にも使っていると伝えています。量産に入る前に、強度や動きの確認、部品の接合の確認を済ませておくことで、量産後の不良を減らす考え方です。ギミックを備えた商品は、動作の確認がとくに重要になります。

安全の面では、小さな部品を含む商品について、対象年齢の表示や、誤って口に入れないための注意書きが、パッケージや筐体周辺に表示されることがあります。具体的な表示の内容や基準は、商品の種類や各社の方針によって異なるため、詳細は各社の公式サイトや商品の表示をご確認ください。事業者側は、玩具の安全に関する業界の基準や、取扱説明書の記載内容を確認したうえで、企画と製造を進める必要があります。

少量生産・オンデマンド製造の位置づけ

量産には金型の製作が必要ですが、金型には時間と費用がかかるため、数量が少ない企画では採算が合いにくくなります。3Dプリントによる造形は、金型を使わずに少量を作れるため、ノベルティや試験的な企画、地域限定の商品などに向く方法として注目されています。一方で、1個あたりのコスト、表面の仕上がり、造形できる大きさや素材、納期の面では量産品と条件が異なります。

企業や自治体がオリジナルのカプセルトイを企画する場合は、数量の見込みに応じて、量産か少量製造かを選ぶことになります。三重県の「街ガチャin菰野町」のように、初回の生産数が2,000個の企画では、数量の見込みと再販の判断が重要になります。同事例では、初回分が短期間で完売し、再販が行われたと実施主体が公表しています。企画段階では、売れ行きの予測が難しいため、追加生産の可否や期間をあらかじめ製造側と確認しておくことが実務上のポイントです。

技術情報を読むときの観点

カプセルトイの技術は、企画、造形、量産、売場の四つの局面に分けて見ると整理しやすくなります。企画と造形では、3D CADや3Dプリンタによる試作が、検討の回数と速さに関係します。量産では、金型と協力工場の体制が、品質と納期を左右します。売場では、筐体の決済方式や通信機能が、運営の手間と販売機会に影響します。

技術に関する公表情報を読む際は、公表された時期と、取り上げられている会社や機種の範囲に注意が必要です。本ページで紹介したエポック社の開発体制とスマートガシャポンは、いずれも2019年の報道に基づいており、現在の状況とは異なる可能性があります。最新の仕様や導入状況は、各社の公式サイトでご確認ください。

一次情報の確認先

本サイトはカプセルトイ・ブラインドボックス産業を公開情報から整理した業界レポートであり、特定の店舗・メーカー・設置事業への投資や出店の推奨ではありません。景品表示法・古物営業法等の記述は概要であり、個別の判断は所管官庁・専門家にご確認ください。